ずっと、君に恋していいですか?
「ずっと会いたかったんだもん…。」

「うん…。オレもだ。ずっと薫に会いたかったよ。」

「なかなか会えないのに…久しぶりに会えても寝ちゃったり…。仕事ばっかりでかわいげもないのに、余裕なくて彼女らしい事なんにもしてあげられないし…志信に嫌われたらどうしようって…。」

堰を切ったように、薫の不安な気持ちがこぼれ落ちた。

薫は志信の胸元にしがみついて、子供のように泣きじゃくる。

「嫌いになんかならないよ。好きだから…もう泣くな。」

志信は涙で濡れた薫の頬を指先で拭って唇を重ねた。

(涙の味がする…。)

薫も会えないと不安になるのだと知って、志信は少し嬉しかった。

抱きしめた薫の体はどこか頼りなげで、愛しくて、この手で守ってあげたいという気持ちになる。

「薫が寝るまでいようかな…。」

「ホント?」

「うん。」

「それじゃあ…。」

薫は立ち上がって、サイドボードの引き出しから何かを取り出した。

そして、志信の手にそれを握らせた。

「ん?」

「この部屋の合鍵。志信に渡しとく。」

「合鍵…。」

合鍵を渡されるくらい特別な存在になれたのかと、志信はしげしげとその鍵を見つめた。

「私が帰る前に来ても、中に入って待っててくれていいから。」

「こんなの渡されたら毎日待ってるかもよ?」

「うん…志信ならいいよ。」

薫は少し照れ臭そうに笑う。

「だから、もう少し一緒にいて。」

「うん。じゃあ…横になって。」


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