ずっと、君に恋していいですか?
そういえば、ずいぶん長いこと薫の手料理を食べていないな、と志信は思う。

(いつも作ってもらってたからな…。今日はオレが作って食べさせてやろう。)

鞄の中からタブレットを取り出して、料理のレシピサイトを開いた。

料理の手順は、ある程度は事前に頭に入れてあるが、間違えないようにレシピを見ながら作業を進めた。



志信は出来上がった料理を満足げに眺めて息をついた。

(おお、上出来じゃん!やってみるとできるもんだな。割と楽しいかも…。)

初めて一人で作ったにしてはなかなかの出来映えだ。

薫の喜ぶ顔が目に浮かぶ。

志信は使った道具を洗い終えると、テーブルの前に座ってタバコに火をつけた。

時計を見ると、7時半を過ぎたところだった。

志信は手料理を作って夫の帰りを待つ新妻にでもなったような気持ちで、ソワソワしながら薫を待つ。

(薫、何時頃に帰ってくるんだろう?早く帰ってくるといいな。)




9時を過ぎた頃。

志信は空腹に耐えかねて、チキンソテーの付け合わせに作ったニンジンのグラッセと茹でたジャガイモを指でつまんで口に放り込んだ。

(それにしても腹減ったな…。腹の虫が収まらん…。)

さっきからお腹がグーグーと盛大に鳴っている。

(先に食べるのもアレだし…。やっぱ一緒に食べたいよな…。)

電話に出られるかどうかはわからないが、何時頃に帰れるのか一度薫に聞いてみようと、志信はスマホを手に取った。



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