ずっと、君に恋していいですか?
その頃。

薫の部屋を出た志信は、合鍵で鍵を閉めて足早に歩き出した。

一人で歩く冬の夜道はとても寒くて、吐く息は白い。

明日は朝イチで会議があるので、準備のためいつもより早く出社しなければならない。

自宅に帰ると、シャワーを浴びてさっさと床についた。

目を閉じて、ゴロリと寝返りを打ってため息をつく。

(アホらし…。オレ、何やってんだろ…。)

勝手にやった事とはいえ、せめて薫の喜ぶ顔が見たかった。

ささやかでもいいから、クリスマスイブを一緒に楽しめたらと思っていた。

だけど結局、そんな子供じみた事を望んでいるのは自分だけなのだと思った。

合鍵なんてなんの意味もない。

会いたくてもなかなか会えないのに一緒に暮らす事も拒まれ、何度電話しても繋がらず、いつ帰って来るかもわからない薫に、何を求めればいいのだろう?




12時になる少し前、薫はようやく自宅に戻った。

鍵を開けてドアを開くと、何やらいい匂いがした。

(あれ…?)

部屋の電気をつけてみると、コンロの上には朝にはなかったはずの鍋が置かれていて、テーブルの上にはラップを掛けられた皿が乗っていた。

薫は鍋の蓋を開け、すっかり冷めきったトマトスープを眺めた。

(え…?)

テーブルの上の皿には、チキンソテーと付け合わせのニンジンやジャガイモが綺麗に盛り付けられている。

(え?何これ?)


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