ずっと、君に恋していいですか?
とりあえず水でも飲んで落ち着こうと開けた冷蔵庫の中には、ケーキ屋の物らしき箱が入っていた。

薫はその箱を取り出し、中を覗いて呆然とした。

(クリスマスケーキ…?えっ…今日って…クリスマスイブ?!)

書類に日付を入れたりするので、今日が12月24日だという事はわかっていた。

だけど、それがクリスマスイブとは結びつかなかった。

「ああっ!!」

きっと志信がクリスマスイブを一緒に過ごそうと、ケーキを買って来て料理を作ってくれたのだとやっと気付き、バッグから慌ててスマホを取り出した。

着信ランプが点滅している。

(えっ?着信?)

着信履歴を開き、志信から何度も電話があったのだと初めて気付く。

(またやっちゃった…。志信に謝らなきゃ…!)

薫は慌てて志信に電話を掛けた。

呼び出し音は何度も鳴り続ける。

(志信、出てくれない…。もう寝ちゃったかな…。)

そして、何度目かわからないほど聞いた呼び出し音が途切れた。

「もしもし…。」

志信の少し掠れた低い声が聞こえた。

「志信…今帰ったんだけど…ごめんね、電話全然気付かなくて…。」

電話の向こうで志信がため息をつくのがわかった。

「お疲れ。」

「あの…料理とかケーキとか…せっかく用意してくれたのにごめんね。」

「…別に、オレが勝手にやっただけだから。」

志信の声が薫の耳に冷たく響いた。

「ごめんね、志信…。ホントにごめん…。」

薫が申し訳なさそうに謝ると、志信はまたため息をついた。



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