ずっと、君に恋していいですか?
「あのさ…。山寺SSから実家近いんだろ?」

「うん…。車で5分くらい。」

「落ち着くまで、実家に帰れば?片道一時間も掛けて通勤するより、実家から通って早く休んだ方がいい。」

「でも…。」

「こっち帰ったってさ…どうせ会えないじゃん。オレは年末年始は実家に帰る。オレが今日みたいな余計な事しても、薫には迷惑だもんな。」

「迷惑なんて思ってないよ。」

「オレ、最近薫に謝られてばっかりだ。これ以上薫に気を遣わせたくないし…薫の重荷になりたくない。」

「重荷なんて…。」

「オレ、明日朝イチの会議で早いから、もう寝るよ。おやすみ。」

「志信…!」

待って、と言おうとした薫の言葉も聞かず、志信は電話を切ってしまった。

薫はスマホを握りしめて、ぼやけた視界に映る志信の作った料理を眺めていた。

(また志信を怒らせちゃった…。)

ごめんと言うのが精一杯で、ありがとうも言えず、次に会う約束もできなかった。

(どうして私ってこうなんだろう…。)

薫は溢れる涙を拭いながら、皿に掛かったラップをはがし、冷めきったチキンソテーを口に運んだ。

「美味しい…。」

薫は、志信が初めて作ってくれた料理を泣きながら食べた。

志信と二人一緒に食べたら、もっと美味しくて幸せな味がしたのだろう。

(私は志信をがっかりさせてばっかりだ…。これじゃ申し訳なくて、一緒になんて暮らせないよ…。)


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