君はオレを好きになる。
存在
左頬に強烈な痛みを感じ俺は倒れ込んだ。

「なっなにすんだよ!!」

抑えた頬がジンジンしてる。

向日葵の右ストレートが綺麗に瑛斗の頬を捕らえた。

「この名前は両親が付けてくれたの!!変な名前とか言うな!」

そう言った彼女の目には涙がたまりまくって、今にも溢れそうだった。

「だからってストレートかます事ないだろ!俺はモデルなんだぞ!顔は止めろよ!」

「そんな事知るかっ!あんたが誰で何してる人なんか知らない!名前馬鹿にする奴なんかろくな奴じゃない!」

「はぁ!?そこまで言うことないだろ!!」

「あんたが用意した御飯なんていらないから、今すぐ私の服返して!!」

しまった…服、忘れてた。

「早く!!」

瑛斗は仕方がなく、乾燥機から向日葵の服を出し、渡した。

「何…これ…??」

「いや、だから、その、お前の服、だけど…。」

「めちゃくちゃ色移りしてるんですけど…。」

「洗濯したら、そうなった…。」

「あんたがしたの?」

「仕方がないだろ!俺は洗濯とかしたことねぇ〜もん!」

「いつもは?」

「クリーニングと、マネージャー。」

「へぇ…そう…。で、私は何を着ればいいの?」

声のトーンが低く過ぎる。

「えっ…と、あっ明日!明日買って来るから!」

「えっじゃまた明日もここに居ろってこと?!」

「そう、なるけど…家に連絡しなきゃいけないなら、俺が説明するから…。」

「それはいい…。」

「いや、だって、お前まだ未成年だろ!?」

「電話しても、私を心配してくれる人は、もう居ないから…。」

「えっ?!」

女の横顔がとてつもなく淋しいと言ってる気がした。

「じゃ、これいただきま〜す!冷めたら美味しくなくなちゃうから…。」

「おいっ!」

「何?」

女の背中が、聞くなって言ってる。

「なぁ…。向日葵…。」

「なんで呼び捨てなの…?」

「お前、このまま此処に居ないか?」

「はぁ?会話になってないけど…?」

「お前…親居ないんだろ?…じゃ俺と一緒だ。」

「ふ〜ん、あんた親居ないんだ…。」

「それに、お前が居れば家の事とか助かるなって思ったんだ…。ほら、あれだ!家政婦だ!俺がお前を雇ってやるよ。悪い話じゃないだろ!?」

「…………。」

「とにかく、考えといて!俺、明日早いから、もう寝るけど、明日ちゃんと服買ってくるから!!じゃ…。」

なにも答えない向日葵を置いてリビングを出た。

寝室に入ると、落ち着いていたはずのモノトーンの部屋は、やけに寒い気がした。

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