君はオレを好きになる。
「瑛斗さん!!」
後ろから俺を呼ぶ声。
この声は…彼女だ。
振り返ると、初めて会った場所に向日葵が立っていた。
傍に大きいトランクが一つと鞄が二つあった。
瑛斗はすぐに向日葵のもとに走った。
「なに?どうして?」
「あの服ちょっと恥ずかしかったけど、家政婦するなら何かといるかなって思って取りに帰ってました。」
「えっでも…出て行ったんじゃ。」
「ちゃんとメモして出たんだけど、見ませんでした?」
瑛斗は優しく笑う向日葵を強く抱きしめた。
体が凄く冷たい。
一体何時間ここで俺を待ってたんだ?
「瑛斗さん?!ちょっと…苦しいっ。」
「あっごめん。その、俺…君のこと…。」
こんな時なんて言えばいいんだ?
本当に望んだモノは、どうやって手に入れたらいい?
「瑛斗さん…話しの途中なんだけど、私御手洗に…。」
「あっそっか、そうだね。ごめん。」
瑛斗は向日葵の荷物を持って、二人で家に帰った。
玄関のドアを開けると向日葵は一直線にトイレに向かった。
瑛斗は荷物を向日葵の部屋に置いた。
今日からここは彼女の部屋なんだと思うと心が躍った。
「ふぅ間に合った。」
すっきりした顔でトイレから出てきた彼女と目が合った。
目が合うと恥ずかしそうな顔をした。
完全に俺はこの子に落ちてしまったんだ。
今すぐ抱きしめて自分のモノにしたくなる。
「瑛斗さん。」
「あっはい!!」
「その大きいトランクはリビングなんです。」
「えっこれ?」
「はい、調理器具なんです。」
「調理器具?」
「だって、何もなかったから。」
「そんなの買えばいいだろ!?」
リビングに入るなり、向日葵はトランクを開け片付け始めた。
「さっきの話なんですけど、メモ見ましたよね?」
「えっ…あぁ。」
慌ててゴミ箱から丸められたメモを広げた。
《一旦、家に帰ります。》
一旦?あの時は確かこんな文字…。
気付き自分のマヌケっぷりに呆れる。
瑛斗は勢いよく掴んだ自分の手で《一旦》の文字を握ってしまっていたんだと。
「ごめん。下で待たせる事になって。」
「それはいいんです。連絡の手段もなかったし…でも、いつもこんなに遅いんですか?」
「日によってバラバラかな…でも、これからはちゃんと連絡入れるから。」
「はい。でも携帯落としたままで、警察にも行ったんですけど、届けないらしくって…お給料とかまだ決まってませんが、出来たら前払いという形で携帯をって思ってるんですが…。」
「あぁいいよ。必要な物なんだから、お金は気にしないで。要るものに対しての金額は俺が出すのが当たり前だから。」
「ありがとうございます。明日は何時に起こせばいいですか?」
「明日から三日間休みなんだ。」
「そうなんですか!?」
パァッと笑顔になった。
本当に太陽に向かって咲く向日葵の様に思えた。
「うん。だから夜更かししないか?お前の事も知りたいし…。」
「はい。じゃ何か淹れますか?」
「えっ?」
「飲み物です。コーヒーにします?」
「いや、紅茶がいい。コーヒーは飲めないんだ。」
「私もです!よかった。葉っぱ持って来たんです!」
いちいち言う事も、やる事も可愛い。
彼女は紅茶を淹れると俺の前に置き、人一人分空けて隣に座った。
「雇われるんですから、何でも聞いて下さい。何でもお答えします。」
「じゃ言いたい事だけ自己紹介して。」
「えっでも…。」
「いいんだ…言いたくない事まで聞きたくないから。」
「はい、じゃ…。」
向日葵は17歳で高校は中退したと言った。
自分には幼い頃、両親は事故で亡くし最近まで祖母に育てられていたが、その祖母も亡くなったと言った。
平気そうな顔で言う向日葵が一人で居る事に耐えているように思えた。
「だからこの世界に私を好きな人も、私が好きな人も居なくなっちゃったんです。」
「向日葵…君は一人じゃない。」
「瑛斗…さん?」
「君は俺を好きになる。」
「なっ何言って…。」
「だから一人じゃなくなるだろ。」
「そんな私の心なんて、わからないじゃないですか!?」
「そうだな。」
瑛斗は笑って向日葵の頭を撫でた。
「俺そろそろ寝るわ。」
「あっはい。」
「明日携帯買いに行こう。昼ぐらいには起きるから、お前もそれぐらいには起きろよ。」
「わかりました。おやすみなさい。」
「あぁ。」
瑛斗は寝室に入ったとたん、腰を抜かした。
このままじゃ俺おかしくなるかも…。
好きな女と暮らすなんて体が持たない…それよりも、神経がやられちまう。
ほどなくして、リビングから寝室に向かう向日葵の足音が聞こえた。
足音は俺の部屋の前で一度止まった。
なんだ?何してる?
耳を一層澄ませた。
足音は再び動くと向日葵の部屋に消えて行った。
心臓のバクバクする音が聞こえる。
よくある発想かもしれないが、全身が心臓になったみたいだった。
俺を待っていた姿を見つけた時から、消せないでいた存在は確立され、俺の全てを支配しようとしている。
でも知られない様にしないと…雇主と家政婦。
これが俺たちの形なんだ。
気持ちを知られてしまえば、そこで終わる。
彼女はきっと出て行くだろう。
俺はベットに入ったものの、明け方まで結局寝れずにいた。
後ろから俺を呼ぶ声。
この声は…彼女だ。
振り返ると、初めて会った場所に向日葵が立っていた。
傍に大きいトランクが一つと鞄が二つあった。
瑛斗はすぐに向日葵のもとに走った。
「なに?どうして?」
「あの服ちょっと恥ずかしかったけど、家政婦するなら何かといるかなって思って取りに帰ってました。」
「えっでも…出て行ったんじゃ。」
「ちゃんとメモして出たんだけど、見ませんでした?」
瑛斗は優しく笑う向日葵を強く抱きしめた。
体が凄く冷たい。
一体何時間ここで俺を待ってたんだ?
「瑛斗さん?!ちょっと…苦しいっ。」
「あっごめん。その、俺…君のこと…。」
こんな時なんて言えばいいんだ?
本当に望んだモノは、どうやって手に入れたらいい?
「瑛斗さん…話しの途中なんだけど、私御手洗に…。」
「あっそっか、そうだね。ごめん。」
瑛斗は向日葵の荷物を持って、二人で家に帰った。
玄関のドアを開けると向日葵は一直線にトイレに向かった。
瑛斗は荷物を向日葵の部屋に置いた。
今日からここは彼女の部屋なんだと思うと心が躍った。
「ふぅ間に合った。」
すっきりした顔でトイレから出てきた彼女と目が合った。
目が合うと恥ずかしそうな顔をした。
完全に俺はこの子に落ちてしまったんだ。
今すぐ抱きしめて自分のモノにしたくなる。
「瑛斗さん。」
「あっはい!!」
「その大きいトランクはリビングなんです。」
「えっこれ?」
「はい、調理器具なんです。」
「調理器具?」
「だって、何もなかったから。」
「そんなの買えばいいだろ!?」
リビングに入るなり、向日葵はトランクを開け片付け始めた。
「さっきの話なんですけど、メモ見ましたよね?」
「えっ…あぁ。」
慌ててゴミ箱から丸められたメモを広げた。
《一旦、家に帰ります。》
一旦?あの時は確かこんな文字…。
気付き自分のマヌケっぷりに呆れる。
瑛斗は勢いよく掴んだ自分の手で《一旦》の文字を握ってしまっていたんだと。
「ごめん。下で待たせる事になって。」
「それはいいんです。連絡の手段もなかったし…でも、いつもこんなに遅いんですか?」
「日によってバラバラかな…でも、これからはちゃんと連絡入れるから。」
「はい。でも携帯落としたままで、警察にも行ったんですけど、届けないらしくって…お給料とかまだ決まってませんが、出来たら前払いという形で携帯をって思ってるんですが…。」
「あぁいいよ。必要な物なんだから、お金は気にしないで。要るものに対しての金額は俺が出すのが当たり前だから。」
「ありがとうございます。明日は何時に起こせばいいですか?」
「明日から三日間休みなんだ。」
「そうなんですか!?」
パァッと笑顔になった。
本当に太陽に向かって咲く向日葵の様に思えた。
「うん。だから夜更かししないか?お前の事も知りたいし…。」
「はい。じゃ何か淹れますか?」
「えっ?」
「飲み物です。コーヒーにします?」
「いや、紅茶がいい。コーヒーは飲めないんだ。」
「私もです!よかった。葉っぱ持って来たんです!」
いちいち言う事も、やる事も可愛い。
彼女は紅茶を淹れると俺の前に置き、人一人分空けて隣に座った。
「雇われるんですから、何でも聞いて下さい。何でもお答えします。」
「じゃ言いたい事だけ自己紹介して。」
「えっでも…。」
「いいんだ…言いたくない事まで聞きたくないから。」
「はい、じゃ…。」
向日葵は17歳で高校は中退したと言った。
自分には幼い頃、両親は事故で亡くし最近まで祖母に育てられていたが、その祖母も亡くなったと言った。
平気そうな顔で言う向日葵が一人で居る事に耐えているように思えた。
「だからこの世界に私を好きな人も、私が好きな人も居なくなっちゃったんです。」
「向日葵…君は一人じゃない。」
「瑛斗…さん?」
「君は俺を好きになる。」
「なっ何言って…。」
「だから一人じゃなくなるだろ。」
「そんな私の心なんて、わからないじゃないですか!?」
「そうだな。」
瑛斗は笑って向日葵の頭を撫でた。
「俺そろそろ寝るわ。」
「あっはい。」
「明日携帯買いに行こう。昼ぐらいには起きるから、お前もそれぐらいには起きろよ。」
「わかりました。おやすみなさい。」
「あぁ。」
瑛斗は寝室に入ったとたん、腰を抜かした。
このままじゃ俺おかしくなるかも…。
好きな女と暮らすなんて体が持たない…それよりも、神経がやられちまう。
ほどなくして、リビングから寝室に向かう向日葵の足音が聞こえた。
足音は俺の部屋の前で一度止まった。
なんだ?何してる?
耳を一層澄ませた。
足音は再び動くと向日葵の部屋に消えて行った。
心臓のバクバクする音が聞こえる。
よくある発想かもしれないが、全身が心臓になったみたいだった。
俺を待っていた姿を見つけた時から、消せないでいた存在は確立され、俺の全てを支配しようとしている。
でも知られない様にしないと…雇主と家政婦。
これが俺たちの形なんだ。
気持ちを知られてしまえば、そこで終わる。
彼女はきっと出て行くだろう。
俺はベットに入ったものの、明け方まで結局寝れずにいた。