奇聞録(冬)
冬の早朝、開かずの踏み切り待ち。
キラキラと白い息が朝日を浴びて光る。
最近はマスクをする人が増えたが、それでも熱気は出ている。
あそこにいる男を除いては・・・。だけど。
なんで俺を見ているんだ?
何か用があるのか?
あ、電車が来た。
男は相変わらず、白い息も出さずに、踏み切りの中に立っている。
何度電車に轢かれても、同じ場所に立っている。
横を通り過ぎるときに腕を捕まれた。
そして男はこう言った。
「あんた、代わってくれないか・・・。」