流れ星スペシャル
「無能とは思えませんけどね、あの店長」
ユースケがホールを振り返った。
ホールではあの男がユニフォームに着替え、二枚の布巾で客卓を拭いている。
一枚はテーブルを拭く布巾。
もう一枚は鉄板を磨くやつ。
ここが不衛生ではお話にならないと、作業前うるるんに教えられ、あいつは誠心誠意、鉄板磨きに取り組んでいる様子。
「だって店長の言うことは、いちいち正しかったやないですか」
ユースケはもう、やつを店長と呼ぶことに決めたようだ。
「うん、うちもスカッとした! トシも案外正しいこと言うけど、あんたやったら殴り合いのケンカになってたやろ、あの子らと」
ム、確かに……。
「あの人はあんな大勢を相手にして、結局のところ会社側からのクビではなく、アルバイト側の希望退職という形に治めたでしょ? それって結構スゴイことです」
と、ユースケが話を引き継いだ。
従業員をクビにすると、あとでもめて訴えられたりとか、めんどくさいらしい。