流れ星スペシャル
「沢井、これ頼めるかな?」
就業時間の17時、10分前。向かいの席の綾香さんが、書類の束をこっちに向かって差し出した。
「計算合わへんねん。ちょっとチェックしてくれへん?」
「あ、はい。いいですよ」
書類を受け取りながら、そう答える。
仕入先からの残高確認書。
細かい部品ばかりのやりとりで、返品やさかのぼっての価格調整も入り、うちの残高と照合するのは、かなりややこしい案件だった。
同じ経理課でも担当している仕事がちがうから、普段こんなふうに仕事を分け合ったりはしない。
今日に限ってこーゆーことを言ってくるのは……。
ん~、わざとやな、綾香さん。
何ページにもわたる帳簿と、客先の残高明細を一行ずつチェックしていく。
出荷日と納入日がずれているうえに、似たような型番が山ほどあって、相当手強そう。
蛍光マーカーを片手に奮闘していると、ボソッと声がした。