流れ星スペシャル
言うよりも早く、トシさんの手が動いていた。
持ち手の付いたカップに生地を入れ、具材を投入しながらかき混ぜて、もう熱々の鉄板に流し入れている。
ジュワーと鉄板の焼ける音。
湯気がワッとあがる。
スゲーな、この人。
一度に6品ぐらい平気で焼くんや。
鉄板がもっと大きかったら、もっともっと何枚でも焼けそうだ。
その上トシさんは、同時にあらゆる方向へと目を配っている。
「うるるん、9番、追加オーダー聞いたげて」
「アズ、4番さん、ドリンクお代わり欲しそうにしてはる」
とか、ぽんぽん指示を出すんだ。
新規の来客にも『いらっしゃいませ』と真っ先に声をあげるのは、必ずトシさんだった。
「そのもちチーズ、焼けたら皿に入れてよけとき。賄いで食えばいーから」
ミスったお好み焼きについて、トシさんはこっちも見ずにそう言った。
「休憩やれんかもわからんから、適当に後ろ行ってパパッと食うといで」
「あ、じゃあ、もうちょっとヒマになったら」