流れ星スペシャル


客足が少~しずつ落ち着いてくる。
まだ、ほぼ満席ではあるけれど。


「それムリ」


ボクが鉄板のお好み焼きを引っくり返した瞬間、横からトシさんが言った。


「あ、焦げ過ぎですかね」

「うん」


確かにかなり焦がしてしまった……。
でも昨日までなら、そのまま客席に運んでた程度の焦げ具合。


もっとひどいのだって出したことがある。




『大丈夫大丈夫。ソース塗ったらわからんし』


富樫店長なら、きっとそう言った。


あの人は自分でもよくお好み焼きを焦がしては、そんなふうに言ってたから。
茶目っ気たっぷりにウインクなんかして。


実際、客席に運んでもみんな気づかずに食べてくれた。


たまに首を傾げるお客さんがいると、富樫店長は下を向いてクスクスと笑ってたっけ。『ヤバ』って。




「焼き直しますか?」


「うん」


トシさんに聞くと、そう即答された。


< 145 / 494 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop