流れ星スペシャル
客足が少~しずつ落ち着いてくる。
まだ、ほぼ満席ではあるけれど。
「それムリ」
ボクが鉄板のお好み焼きを引っくり返した瞬間、横からトシさんが言った。
「あ、焦げ過ぎですかね」
「うん」
確かにかなり焦がしてしまった……。
でも昨日までなら、そのまま客席に運んでた程度の焦げ具合。
もっとひどいのだって出したことがある。
『大丈夫大丈夫。ソース塗ったらわからんし』
富樫店長なら、きっとそう言った。
あの人は自分でもよくお好み焼きを焦がしては、そんなふうに言ってたから。
茶目っ気たっぷりにウインクなんかして。
実際、客席に運んでもみんな気づかずに食べてくれた。
たまに首を傾げるお客さんがいると、富樫店長は下を向いてクスクスと笑ってたっけ。『ヤバ』って。
「焼き直しますか?」
「うん」
トシさんに聞くと、そう即答された。