流れ星スペシャル
「まだやで」
気を取り直して焼きそばを焼いていると、横からスラッとトシさんが言った。
「え?」
ちょうど炒めた麺に出汁を掛けて蒸らそうとしたときだった。
「それな、お前のタイミングちょっと早いねん」
鉄板の奥に据えてある小鍋から、出汁をすくったレードルを止める。
「ベチャッとなるやろ。…あ、今入れて」
「は、はい」
「いつもの自分のタイミングより十数えてから入れてみ」
それだけ言うと、トシさんはもう自分の鉄板に視線を戻した。
おー……。
出来あがった焼きそばは、今までボクが作ったどれよりも、数倍おいしそうな出来だった。
ヤバい。めっちゃうまそう。
富樫店長が、自分の休みの日には絶対にトシさんをシフトに入れなかった理由が、何となくわかった気がした。