流れ星スペシャル
「でも、それがきっかけになって楽しく過ごしてもらえたら、それでええしな」
「おー、プロですね。そうやってひとりでも常連さんが増えていったら、うれしいですよね」
なんて、やつは大げさに感心している。
「富樫さんには『女に媚びんのメッチャうまいな』って言われとったけどな」
オレがつぶやくと、やつは即座に否定した。
「それはちがうな。トシくんは女性でも男性でも、お年寄りでもお子様でも、ここへ来てくれたお客さんすべてに、あの笑顔を向けるでしょ?」
「笑顔?」
「うん。厨房とちがって、客席で見せるトシくんの笑顔は最高です! キッラキラに輝いている」
なっ、なんやねん、こいつ。
「あ前さー、さっきから、何? 口動かすヒマがあったら、体を動かせや」
「は、はいっ」
「ホールを回って、グラスが空いているお客さんがいたら声かけてきて。
『何かドリンクお持ちしましょうか』って」
「は、い」
「あんたデカいから、片ひざついてお客さんを見あげるようにして聞いてな。会話のじゃまにならんようにするねんで」
「は、はい」