流れ星スペシャル
そうして、やつはまたホールへ出ていった。
「ド、ド、ドリンク、何かお持ちしましょうか?」
カウンターのお客さんに噛み噛みで接客している。
顔が恐ろしく引きつってんのは、もしかして笑顔でも作っているつもりやろーか……。
とまー、余裕だったのはそれまでで、そのあとは大人数のニューゲストが重なり、オレはかなりへとへとになった。
なんせ、焼きやサイドメニューはもちろん、ドリンクを作るのもPOS入力もレジ精算も、全部自分でしなければならないから。
いつでも鉄板から離れられるというわけではないので、かなりの遅れが生じてくる。
ビールだけでもあいつに教えといて、マジ助かった。
「あの、他のドリンクも作ってみましょうか」
見かねてやつが申し出てきた。
酒屋からもらったレシピの書かれた冊子を発見したらしい。
カクテルやサワーの作り方がひとつずつ丁寧に書かれているやつ。
「大丈夫か?」
「ええ。焼酎の名前もわかってますし」
「そっか? じゃー任せる。わからんかったら、すぐに言えよ」
どれに何を入れるのか、取り急ぎグラスの種類だけ説明して、オレは焼き場に戻った。