流れ星スペシャル
今夜は来客が多いな……。
それ自体はありがたいことなんやけど。
平日の夜に入るんは久しぶりだから、少しナメてたのかもしれん。
ドリンクは任せたから、フルパワーでフードを作り、自分で運ぶ。
おっさんはおっさんで、ドリンクを作っては、せっせと運んでいた。
とは言え、ちょっと心配にはなる。
ドリンクはお客さんの口に直接入るものだから、適当なことをされたら困るしな。
厨房を覗くと、やつは大真面目にドリンクを入れていた。
レシピを見ながら、カクテル用の小さな計量カップで、几帳面に酒を計っては入れている。
レシピに『グラスの8分目まで注ぐ』なーんて記述があるのかな?
わざわざしゃがんで目線をグラスに水平にして、いちいち量を確認していた。
う、ドンくさすぎるやろ……。
でもまー、うるるんよりマシか。
いつも目分量で作るうるるんのドリンクは、激しく濃かったり薄かったりするから。
以前、水みたいに薄いハイボールを持っていこうとするから、注意したことがあったっけ。
そうしたらうるるんはフンッと顔を背け、無言で引き返すと、あてつけのようにウィスキーをドボドボ注ぎ足していた。
ん~。
結局、悪いやつではないんやろな、この人……。
デカい図体を縮こめて、大真面目にドリンク作りに励む姿を見て、まー……そう思った。