流れ星スペシャル
すべての業務を終え、私服に着替えて事務室を出ると、おっさんはまだ厨房にいた。
「まだ帰らんの?」
なんでかデッキブラシなんか携えている。
こっちの質問はスルーして、やつはオレにこう聞いてきた。
「シフトやねんけど……、トシくん、ほんまに全然休まれへんけど。ええんかな?」
スイッチがオフになったのか、もうヘンな敬語は使っていない。
「えーよ」
つーか、あんたができるようになるまで、そーするしかないし。
「ありがとう」
「別に」
それからやつはこっちを向いて、にっこりと笑った。
「トシくん、オレ、がんばるからな」
で、なぜか突然の決意表明。
「オレ……ちゃんとがんばるから」
「は? 当たり前やろ。それ」
憎まれ口をきいてやったけど、やつはただ、ふんわり笑ってうなずいていた。
なに、そのふんわり感。
ったくもー、調子が狂う……。