流れ星スペシャル


――
―――……


「おい」


………?


「おいっ、何寝てんねん、コラ」


「ん……?」


「ナメてんのか、お前っ」


ガツッと肩を叩かれて、目が覚めた。
いつのまにか熟睡してしまったらしい。

ボックス席の硬い背もたれから体を起こすと、見知らぬ男が、オレを憮然と見下ろしていた。

色黒で短髪、小柄で目つきの鋭い男。



「お前なんやねん。人を呼びつけといて、おのれは寝てんのか?」


本部の研修指導の人だ。


「あ、いやっ、すみません」


慌てて立ちあがり、オレは深々と頭を下げた。



「桂木慎一郎です。よろしくお願いします」


スーツのポケットから名刺を取り出し、名刺入れを台にして男に差し出す。


「あ? なんやねん、お前。サラリーマンか」


男の手にパシッとはたかれ、名刺はひらひらと床に落ちた。



「オレは西条や。西条ノボル。十号店で店長やってる」

「は、はいっ」


取りあえず名刺を拾おうと手を伸ばしたとき、男はガッと、靴で名刺を踏みしめた。

伸ばしたオレの指ごと踏みつけるぐらいの勢いで。



ヤバい……。相当怒らせてしまったようだ。

しかも、めっさ恐ろしげな人やん……。


< 186 / 494 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop