流れ星スペシャル


「ほんまやったら、お前がオレの店に来て、教えを乞うのがスジやろーが」


西条さんの怒りは、どうにもおさまらない。

流れ星チェーンのルールでは、新たに店を開く場合や、未経験者が店長になるときは、本部の研修を受けなければならないと決まっている。

直営店に1、2カ月は勤務して、味も接客マインドも経営のノウハウも、しっかりと叩き込んでもらうんだ。


「それを何が悲しいて、オレがわざわざ出向いて教えたらなあかんねん。しかも2週間も通えって? どーゆーことや。おかしいやろ、コラ」


まくし立てるように西条さんは言った。


「すみません! スタッフが急に大勢辞めて人手が足りなくて……。だからここで店を開けながら、研修を受けたいんです。お力をお貸し下さい、西条さん」

「それは自分らのせいやろ。勝手なこと言うな」


深々と頭を下げたが、西条さんはそっぽを向いたままだった。


「まぁ、オレも仕事やから、教えんわけにはいかんけど……。覚悟はできてるんやろな、お前」


今度は口の端だけでニヤリと笑う。


「覚悟?」

「本来なら2カ月かかる研修を2週間で済ますんや。本気でしごくからな」

「あ、はい。お願いします」


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