流れ星スペシャル
焼き場で特訓しているふたりのことは放っといて、オレらはとりあえず開店準備に取りかかった。
「あれ?」
店内の電気を全部つけ、電飾の看板を表に出して戻ってきたとき、妙なことに気がついた。
一番テーブルの灯りだけが、なぜか明るい。
「ん……?」
近付いて見あげると、理由はすぐにわかった。
一番の電灯のカサだけが、キレイに掃除されている。
こびりついていた油ギッシュなほこりが、丁寧に拭き取られているんだ。
カサだけじゃない。テーブルも椅子も、上に載った調味料入れのべたつきも、全部がキレイになっていた。
焦げついていた鉄板までもが、ピカピカに磨かれている。
あいつ……。
誰が拭いたのかは想像がついた。
昨夜グリストを掃除すると言って残った桂木さんは、いったいどんだけ時間をかけて、これをやったんやろう?
今まで手を抜いていた分、かなり大変だったはずやけど。
「こらボケッ、やり直しや」
「は、はいっ」
厨房ではいまだ、西条さんの怒鳴り声が響いていた。