流れ星スペシャル


「実際こっちに配属ってなったら、沢井さん悲しむと思う」

「え、悲しいん?」

「うん……。9時5時土日休みのデスクワークが、ここで社員となると夕方から深夜まで働かなあかんやろ。土日も仕事。体はキツイし、今まで積みあげてきたキャリアとは無縁の世界や」


「ふ~ん」

「誰も連れて行きませんから大丈夫です、な~んて……オレも宣言してしまったしな」


眉を下げて力なく笑う顔にムカついた。


「『大丈夫』ってなんやねん。ここに配属されることは、そんなに最低なことなんか?」


思わず低い声が出る。


「いや、ちがうちがう。長年OLやってる人ならそう思うやろと言っただけで、」


あわてて否定する顔にもムカついた。


「桂木さん、それ、あんたの気持ちやろ」

「え」

「この店に配属されて残念なんやろ? そう思ってるから、そーゆー言葉が出てくるねん」


トゲのある言葉が、口をつく。


「どーした、トシくん」


オレの急変に、桂木さんが驚いた顔をした。


「正直に言っていいですよ。流れ星勤務は不本意で、ほんまは本社に戻りたくてしゃーないって」


西条さんから聞かされた言葉の数々が蘇った。


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