流れ星スペシャル
「いや、オレはそんなこと思ってないよ」
「ええ数字あげたら戻れんの? だからがんばってるん?」
「そんなんとちがうって。オレはもう会社に戻る気はないから」
「は? 戻る気がないんじゃなくて、戻られへんだけやろ? 戻りたくても戻られへんから、しゃーなしここで働いてるんやんな?」
言い合いの次の言葉を一瞬とめて、桂木さんはオレを見る。
それからゆっくりと諭すようにこう言った。
「トシくん。オレはそんなこと考えてない」
「別にいいですよ、考えてても」
オレもゆっくりと、そう答えた。
別にいい。
それならそれで、こっちもそう考えてつきあうだけだ。
「待てよ、トシくん」
その言葉をスルーして、オレはもう出口へと向かった。
「ナメんなよ、ボケッ」
そう言い捨てて外に出る。
自転車に跨りながらチラッと振り向いたけれど、桂木さんが追って来る様子は、まったくなかった。