流れ星スペシャル
あーあ、西条さんの影響モロに受け過ぎ……。
夜の街を自転車でこぎ出すと、夜風がひんやりと気持ちいい。
あんなに突然キレてしまったことが、急に恥ずかしくなってきた。
会社員だった桂木さんが飲食店に異動させられて、うれしかったはずはない。
そんなことぐらい、オレだってわかっていたはずなのに……。
だけど何だか裏切られた気がしたんだ。
あの人となら一緒にがんばろうと、思い始めた矢先だったから。
ドン臭いくせに根性あるところも、
不器用ながら一生懸命な姿も、
自分とはちがう大人な考え方も……。
あの人にならついていこうと思える相手だった。
そーゆー人に初めて出会えた気がしていたんだ。
「ハ、ガキやな、オレは……」
だけど、桂木さんとオレとじゃ目指すステージが違う。
オレにとって最終ステージであるここは、あの人にはただの通過点に過ぎない。
ここは次のステージへステップアップするための踏み台。
その事実に、オレは自分の気持ちまで踏みつけにされた気がしたんだ。
踏みつけた相手が桂木さんだったことが悲しかった。
「ムカつくねん、ボケッ」
繁華街を離れると、夜の街はシンと静まり返っている。
その闇を自転車で行くと、カッと憤った心が、夜風にクールダウンしてくる。
そーなると残るのは、自己嫌悪とただの悲しい気持ち。
「くっそー、あんなやつ、もう信じへんからなっ」
そのやるせなさに負けまいと、オレは自分に念じつつ、夜道を走った。