流れ星スペシャル
「どうか西条さん、これからもご指導よろしくお願いします!」
そう言うと、桂木さんはもう一度深く頭を下げる。
「は? 殺されかけた相手に、よろしくご指導なんてできるわけないやろ」
西条さんはピシャリとそう言い捨てた。
そのまま厨房を出て、足早に事務所へ入り、着替えもせずに荷物だけを持って店を出ていく。
これは……。
「ちょっとヤバいんちゃう?」
いまだ感動中のユースケにささやいた。
「何がですか?」
「西条さん、もう二度とここへは来-へんのとちゃうか」
「別にいいですよ、あんなパワハラ野郎。来ない方がみんなでがんばれます!」
キラキラおめめでユースケが言う。
「いや、でも桂木さん研修中やからさー」
「研修ったって、何も教えてくれないじゃないですか、あの人は。怒鳴ったり、蹴ったりするだけで」
「それはそーやけど、でも今の件、社長に知れたら大変なことになるで」
大げさではなく、マジでヤバいと思っていた。
「おそらく西条さんは、これを切り札に使う」
「切り札?」
「店長をクビにする切り札。あんなに辞めさせたがってたんやから、今日のことを本部に言いつけて、桂木さんは店長不適格ってことにされるんちゃうか」