流れ星スペシャル


「はい。……はい」


オレもユースケも耳をそばだてていたけれど、当然話の内容まではわからない。


「えっ、本部から電話があったんですか?」


桂木さんの声のトーンが明らかに変わった。

しばらく黙っているのは、社長が一方的にしゃべっているからだろうか。


「……はい、は…い、いいえ、わかりました」


そう答えて、桂木さんは短い電話を切った。

心なしか顔が引きつって見える。

そうして洗い場へと戻った桂木さんは、黙りこくったまま皿を洗い続けた。

店はそのまま忙しくなり、オレらも知りたい気持ちはいったん保留して、繰り出される注文を焼き続けた。



「ゴメン、トシくん。今日オレ、早めにあがらせてもらってもいいかな?」


しばらくユースケと並んで焼いていると、桂木さんがそんなことを言いに来た。


「店長が決めたらええやん。オレ、言われたとおりにしますから」

「じゃあ、みんなを帰して大変やったら、店は早めに閉めてくれる?」

「はい」


そこへユースケが割って入る。


「大丈夫です。ボクがラストまで残りますからっ」

「は? お前、電車なくなるやん」

「今夜はボク、店に泊まります!」


ユースケの目がゴーゴーと燃えていた。


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