流れ星スペシャル


「いらっしゃいませ」


そろそろラストオーダーを訊いて回ろうかという頃、店の入口からひょっこりと常若社長が姿を現した。

あ!

後ろに桂木さんは……いない。


「おー、がんばってるかぁ?」


大声でそう言いながら、社長はカウンター席にドカッと腰を下ろした。


「お疲れ様です。おひとりですか……?」

「うん。キミらが辞めずに残ってくれたんやなぁ。ありがとう」


ニコニコッと親しみやすい笑顔がオレらを見る。


「出張から、今日戻って来たんや。すぐにでもここへ飛んで来たかったんやけど、どーにも忙しくてな。あ、お冷くれる?」

「は、はい」


ユースケが冷水器のほうへと向かう。


「えっと、桂木くんは?」


厨房に目をやり、社長は言った。


「え、」


桂木さんは社長に会いに行ったんじゃなかったんか……?


「店長は……、今日はもう帰られました。いつもだとひとりで遅くまで残ってはるんですが」

「ふ~ん」


社長はそれからオレらに向かって、こう告げた。



「あのな、桂木くんの研修、打ち切りになったで」





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