流れ星スペシャル


土曜の夕方4時、わたしが店に入ると、薄暗いホールから元気な声がかかった。


「おはよ~!」

「おはよう、うるるん。今から準備?」

「うん。今日は早いな、アズちゃん」


うるるんが電気のスイッチを入れると、店内がパァッと明るく灯る。


「今日は会社休みやから早く来たよ。オープン前から入るん初めてやから、いろいろ教えてね」

「わ~い。頼りにしてま~す」


週末のミナミは人出が多い。
近場からも遠方からも人が集まってきてはごった返す。

だから界隈の飲食店にとっては、客数も売り上げも跳ねあがる大事な日。
週休二日のOL業は休戦して、今日はこっちに参戦!


「おはようございま~す」


着替えて厨房へ入ると、桂木さんが寸胴鍋の前に立ち、出汁をとっているところだった。


「あ、すみません、沢井さん。会社休みやのに」

「ううん。今日は忙しいもんね?」

「おそらく」


桂木さんが少し困ったように笑う。


「あの、求人広告の反響、やっぱないんでしょうか?」


気まずそうに桂木さんは聞いた。


「あー、うん……」


ネット媒体にあげているバイトの募集記事は、見事なまでに空振りで、応募がまったくない。


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