流れ星スペシャル


「どこも人手不足で困ってるみたい」


同じエリアで競合がひしめく中、フツーの時給のお好み焼き屋さんなんか、簡単にスルーされてしまうらしい。

もっとおしゃれで、もっと時給のいいお店ならいくらでもあるもん。

カフェバーとか、創作料理のお店とか。
イタリアンとか、スィーツとか……。


「あの、すみません。いつまでも手伝ってもらってて」


桂木さんがペコリと頭を下げた。


「ううん。わたしが勝手に来てるだけやし」


へらっと笑顔を作る。


桂木さんがこの店に転属になって半月近く。
店はやっと順調に滑り出した感じ。

そうして迎える2度目の週末。
前回はピーク時に手伝っただけだけど、この土日はたっぷり働いてみようと、心に決めていた。


「オープンからラストまで通しで入ったらどんな感じか、体験してみようと思って」


そんなふうに桂木さんに切り出してみる。

夕方から深夜まで、休憩をはさんでの8時間労働。プラス残業。
正社員で配属されれば当然となるその勤務を、自分がこなせるのか確かめてみたかった。

帰りだって遅くなる。
自転車で帰るん怖いかなぁ……?


「バイトの子、誰かいないか、みんなにも当たってもらってますから」

「あ、うん……」


バイトの子、か。


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