流れ星スペシャル


「沢井さんも一緒にやりましょう」

「え、わたし?」


うん、と桂木さんがうなずく。


「入社以来オレは、沢井さんにはずっと面倒かけっぱなしです。夜遅くまでかかる見積書を急に頼んだり、分厚い提案書を一からやり直してもらったり……。

思えば他の人に頼んだら怒られるようなことを、オレはいつも沢井さんに頼んできました」


なんて、この期に及んで打ち明けてくる。


「それでも沢井さんは、いつでも『しゃあないなぁ』って、笑って引き受けてくれた」

「う……ん」

「でもね、今回はそれはナシでいいです」


と桂木さんは言う。


「誰もやる人がいないからとか、オレに同情してくれてとか、店のみんなが大変そうやからとか、そんなので決めなくていいですから」

「桂木さん……」


黒い瞳が真っ直ぐにわたしを見ている。


「でももし、オレたちと一緒に強い店を作りたい、と思ってくれたなら、どうか流れ星に転属して下さい」


テーブルに両手をつき、桂木さんは頭を下げた。


「沢井さんの力が必要です」


胸のど真ん中にジーンと熱いものが込みあげてくる。


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