流れ星スペシャル
「アズも桂木さんの横に行ったらええやん。反対隣空いてるで」
「は? なんのために?」
トシさんの言葉にアズちゃんがそっぽを向いた。
「気になるんやろ? 桂木さんのこと」
「別に。なんで?」
とこちらは全然素直じゃない。
テーブルの向こう側はちょっと別世界になっていて、うるるんはまだしつこく店長に迫っていた。
「ウチな、店長とならキスしてもええよ」
「はは、何言うてんの」
店長は取り合わない。
「ねー、チューして」
「うる、酔っ払ってんのか?」
ここで店長、少し真顔になる。
「マジやもん」
「あかんあかん。オレ結婚してるねんで。不倫やん、そんなん」
と素で断ったり……。
「いーもん。ウチ、店長となら不倫する~!」
「アホなこと言うな」
「不倫上等! 不倫バンザイ!」
「こらっ」
はしゃぐうるるんを制止する店長。
「も~、店長つまらん。マジメ過ぎる」
「そうです、そうです。オレはつまらん男やねん」
そう言ってグラスに手を伸ばしかけた桂木店長の頬を、うるるんはギュッと両手でホールドした。
え。
そうしてそこへ自分の顔を近づけていく。
目をつむって、もう少しで唇が触れそうなくらいに……。