流れ星スペシャル


「は? あいつ、何やってんねん」


トシさんもアズちゃんもボクも、テーブルの向こうの光景に、ただポカンって感じで固まっていた。


「うる、いい加減にしとき」


店長がうるるんの手を振りほどいて体を離す。


「もー、ノリ悪いなぁ、店長は」

「オレ……こういうのキライやねん」


「あっそ。じゃー勝手にするもんっ」


言うなりうるるんは身を伸ばして、店長の唇に……、

なんとホントにキスをした!


「やめろっ」


次の瞬間、店長が腕を振りあげ、うるるんを跳ねのける。


「汚いマネすんな……っ」


さらに大声で怒鳴りつけた。



パッキーンと、空気が凍りつく。



店長に振り払われた拍子に尻もちをついたうるるんは、座敷にそのままの形で固まっていた。

呆然と店長の顔を見あげるその瞳は、じわぁっと潤んできて……。



「ちょっと何してんのよ、アホッ」


アズちゃんが立ちあがり、トシさんを踏んづけて、向かいの席へと飛んで行く。

そうして、あわてて立ちあがった桂木店長の頬を、ピシャッと一発ビンタした。


「あほちゃう? こんなに若くて可愛い女の子にキスされて、突き飛ばすとかありえんへんやろ」

「い、いや、突き飛ばすつもりは……」

「なくても突き飛ばしてるやん」


< 287 / 494 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop