流れ星スペシャル
「知らんやん。ノリでチューすんのもイヤなくらい汚いと思われてんねんで? 例えばハンバーグとか、ウチが作ったのは汚くて食べられへんってことやもん」
「えっ、ハンバーグ? めっちゃ食うやろ、桂木さん。作ってみたらええねん」
「なんでウチがあの人にハンバーグ作らなあかんのよ」
「いや、お前が言うから」
トシさんは鉄板にひとつだけ乗っかっているお好み焼きを、ポンとひっくり返した。
「もうええし……。あの人、富樫さんとちがって普段優しいから、余計キツイねん」
うるるんは店長のことをそう言った。
「とにかく、態度が悪くてあかんのならクビにしてくれてええよ。ウチこんなバイト、いつでも辞めたるから!」
そうしてそう言い捨てると、ホールへ出て行った。
「結構、根深いスね」
新しく入ったオーダーのために、鉄板に油をひきながら、ボクは並びのトシさんに言った。
「な」
トシさんもタメ息混じりにつぶやく。
「ハン。そんなん桂木さんの自業自得やん」
いつから聞いていたのか、アズちゃんが出来あがったお好み焼きをちりとりに乗せて、去っていく。
こちらもかなりご立腹の様子……。
「ヤバいスね」
「おー…」
せっかく団結した流れ星が、早くも大ピンチ。
トシさんでもたじろぐこの事態を、あの桂木店長が修復できるんやろうか?