流れ星スペシャル
そして11時過ぎ――
ちょうど客足が途切れ、ボクと一緒にうるるんもあがりとなった。
「うる、お疲れ。今日はもうええよ」
厨房で店長が声をかけている。
けれど、うるるんはやっぱり返事もせずに、店長に背を向けて歩き出した。
ボクはまだ鉄板のところにいて、トシさんとその様子を眺めている。
ちょうどドリンクを運んで戻って来たアズちゃんも、チラリと厨房へ目をやった。
「うる、明日は元気に来てくれる?」
店長は明るく、もう一声かける。
「シフトに入ってるから来ますけど、元気かどーかはわかりません」
一応足を止め、その明るい声に水をぶっかけるように、うるるんは言った。
「ゴメン!」
そんなうるるんに、店長は深々と頭を下げる。
「突き飛ばしたりして悪かったっ」
頭を下げたままの姿勢で、店長が言った。
うるるん、無言。
「怒鳴ってゴメンなさい」
さらに重ねて店長は謝る。
「…………」
しかしうるるん、やっぱ無言で……。
「うる、もう怒らんといて」
やっと顔をあげて、すがるように店長は言った。