流れ星スペシャル


「別に怒ってませんけど……。店長にとって、ウチはそういう存在なんやってわかっただけです」


取りつく島もないうるるんの返事。


焼き場に並んで立つボクらは、体こそ客席を向いているものの、顔は半分後ろを振り向いて、厨房の奥で交わされるバトルに神経を集中させていた。


「トシくん、お客さんに追加オーダー聞いてきたら?」

「アズこそ皿下げに行けや」


なんてささやき合いながら、二人はじっと動かない。


「ユースケ、電車なくなるで」

「まだギリ大丈夫です」


もちろんボクも、このまま見過ごしては帰れなかった。



「うる、ちょっと待てって」


とうとう、厨房を出て行こうとするうるるんの手首を、店長がつかんだ。


「触らんといてよっ」


その手を振り払おうと、暴れるうるるん。


「もうイヤッ。離してってば」


だけど力ではかなわなくて、うるるんは泣き叫んだ。


「ゴメン。どうしたら許してくれる?」


店長も必死。


「イヤッ。店長なんか大きらい!」

「うる、聞いて。頼む」

「イヤや。離してよっ」


「オレな、嫁と別居中やねん」


と、店長は言った。


……ん?


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