流れ星スペシャル
「なー、アズちゃん。四番のお客さんちょっとキモいねんけど」
厨房でうるるんがささやいた。
「コラ、お客さんのこと、そーゆー言い方すんなって、いつも言うてるやろ」
トシくんが耳ざとく聞きつける。
「だって中年のオッサンがふたりで、なんか……泣いてんねんで」
「えっ、泣いてるん?」
わたしは身を乗り出して客席を見た。
ん~、よく見えへん……。
「そら悲しいこともあるわいな」
トシくんはそれをたしなめるように、そう言った。
「トシ。できたぞ、流れ星スペシャル!」
そのとき鉄板の前で、桂木さんが声をあげた。
見ると鉄板の上には、通常の倍ほどの大きなお好み焼きが、こんがりとおいしそうに焼きあがっている。
この流れ星スペシャルは、店のメニューの中で一番高いやつ。
肉やえび、いかなど魚介類もたくさん入っているから大判で、引っくり返すときに形がくずれやすい。
それが上手に焼けて、うれしそうに桂木さんは言った。
「スペシャル、四番。よろしく」
「は~い!」
と、それを客席へと運ぶ。
さっきうるるんがキモイと言っていた席だ。