流れ星スペシャル


同じ週のある日――

カウンター席にずらっと4人、若い女性客が並んだ。


「がんばってる? 桂木さん」

「あ」


桂木さんの動きが止まる。

ん?


「キャー、みんなで来てくれたん?」


よく見ると、懐かしい経理課のメンバーだった。


「沢井がちゃんとやってるか、チェックしに来たで」


そう言って笑った綾香さんに、思わず飛びつく。


「見て見て! 桂木さんスゴイでしょ? 上手に焼けるようになってんよ」


ミユちゃんと、他の後輩ふたりにもゴリゴリッとアピールする。

カウンターから耐熱ガラス越しに見える大きな鉄板の上で、ちょうど桂木さんが焼きそばを炒めているところだった。

肉と野菜を手早く混ぜるコテの音がカチャカチャと小気味良く響いている。


「ほんまや。カッコいい!」

「スゴ~イ! 男っぽいなぁ……」


4人はそのコテさばきに見とれて、感嘆の声を漏らす。

フフフ。どうだ!


なのに桂木さんはボソッとつぶやいた。


「つーか全然見てないやん、オレのこと」


へ?


前に回って確かめると、なんと4人の視線は桂木さんを完全にスルーして、隣でお好み焼きを焼いているトシくんに釘付けとなっていた。

え~と、トシくんの手元とか、顔とか……?


< 307 / 494 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop