流れ星スペシャル
「沢井、まだ残るん?」
定時の5時をとうに過ぎて、一緒に残業していた向かいの席の綾香先輩が立ち上がった。
「わたし、もう帰るよ。沢井は?」
「んー、もうちょっとだけがんばろーかと思ってます」
「金曜日やで。デートとかないん?」
と綾香さんが笑う。
綾香さんは同じ経理課の1年先輩。わたしがとっても頼りにしている人だ。
「ないって知ってますでしょ。もーええねん。仕事に生きるんやから」
ふてくされたように口をとがらせると、「またまた」と綾香さんは笑った。
「じゃー、お先に」
「はーい。お疲れさまでーす」
短大を出て入社して、綾香さんが8年目。わたしが7年。
いつのまにか、この会社に十数人いる女子社員の中では、結構な古株となっていた。
寿退社だけじゃなく、3、4年で転職する子が案外多いんだ。もっとちがう自分を探して……。