流れ星スペシャル


「キャー、トシくんになら騙されてもいい!」


しかし後輩たちはハイテンションのままはしゃいでいる。

懲りずにホストクラブの店名を聞き出そうとして、

「うちの店、ぼったくりやからやめとき」

と軽くあしらわれていた。


そうそう。
前にうるるんと必死で聞き出そうとしたけれど、トシくんはお店の場所すら教えてくれなかったもん。


「あれって作戦?」


綾香さんがささやいた。


「ホストなら、普通は名刺を渡して『指名してな』とか誘うんとちゃうん? 
あんなふうに突き放されたら、逆にあの子ら燃えあがってもーてるやん」

「あイタ。行く前からハマってしまったか」

「でもあの男の子、ほんまにオーラあるよなぁ……」


綾香さんはトシくんを見て、しみじみとつぶやく。


「よかったやん、沢井。転属して」


な~んて言われた。

いやいや、彼、6歳も年下なんですけど。


「でも、いつか絶対に突きとめて、トシくんのホストクラブへ行こうって言ってるんです」


うるるんとの約束を、そう綾香さんに打ち明けたら、トシくんに聞こえたようで、ギロッとにらまれた。


「は? お前、来たら殺す」


トシくんはわたしには可愛く笑ったりなんか、ちっともしてくれずに、黒い言葉を吐いた。プン。


そうしてその日、経理課のみんなは、大いに食べ飲みしゃべり、帰って行ったのだった――。


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