流れ星スペシャル


水曜日、開店準備中。


「なぁ、今日のトシって、ちょっとちがうと思わへん?」


客席のテーブルの下をほうきで掃きながら、うるるんが言った。


「わかるっ!」


わたしはピタッと、卓上ソースの汚れを拭く手を止める。


「なっ」

「うん!」

「水曜日?」

「そう、水曜日!」


そっと厨房を振り返りながら、うるるんとうなずき合った。


トシくんは、やっと取れるようになった週1の休みを、毎週火曜に固定してもらっている。

そしてその火曜日限定で、ホストクラブへの復帰を果たしたらしい。

だから明けて水曜日、トシくんはその残り香を纏って店へ来る。

いつも清潔な彼のことだから、お酒や香水の匂いが残っているってわけではないんだけど。

でも何て言うか……、ホストクラブに集まる女性の色香が、長い睫毛や口元、色白な首筋にまとわりついているように感じるんだ。


「何それ? 水曜のトシはどうちがうん?」


仕入れの配送業者が床に置いていった段ボール箱を開けながら、桂木さんが聞いてきた。

内緒話が聞こえたらしい。


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