流れ星スペシャル


「飲む?」


トシくんの横へ行き、桂木さんがグラスを差し出すと、トシくんは素直にそれを受け取った。

そうしてコクコクと水を飲み干し、小さな吐息を漏らす。


「ありがとうございます……」


それから、桂木さんを見あげて、ふわっと微笑んだ。


「あ、うん」


トシくんの手からグラスを受け取り、桂木さんはわたしたちのところへと戻って来る。


「プハ。めっちゃ可愛かった…!」


なんて桂木さんは笑った。


「でしょ?」

「なんか儚げで、かまってやりたくなる感じ」

フフ。
トシくんいつもは、やたら尖ってるもんな~。


「でもな、お客さんが来るまでやねん。あのバージョンのトシは」


うるるんが残念そうに言った。


「え、そうなん?」と桂木さん。

「お客さんが来たら、何らかのスイッチが入るみたいで、いつもの憎たらしいトシに戻ってしまう」

「なるほど」

と言いつつ、桂木さんはまたグラスに冷水を入れ出した。


「もう一杯あげて来よっと。めっちゃ気に入ったし、オレ」

「あかん! 次はわたしが行く」

「あかん、あかん! そんなに水ばっか飲ませたら、トシくんがお腹こわすやろ」


て感じで、水曜日のトシくんには、みんな親切なのだった。


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