流れ星スペシャル
そうして――
パソコンの右下に表示される時間は、いつのまにか20時を過ぎていた。
遅いなぁ、桂木さん……。
経理課にはわたしだけになってしまったけれど、同じフロアにはまだ残業している人がチラホラといる。
だけど中村課長から精算を頼まれた最後の一人、桂木さんはまだ戻ってなかった。
取引先に怒られに行ってるって言ってたっけ。
話がまとまらずにモメているのかもしれない……。
ちょうどそんなことを考えていると、オフィスの扉が開いて、大柄の男性が姿を現した。
あ、桂木さん!
長身のスーツ姿が大股で歩いてくる。
スタスタと足を踏み出すたびに、後ろに流した黒髪が額にかかって揺れていた。
「あ、お帰りなさい」
わたしのデスクの前を横切る桂木さんに、思わず声をかけたけれど、彼は軽く会釈をして早足で自分の席へと向かってしまった。
あれ?