流れ星スペシャル
「でも、代わりにトシくんが育ってくれてたんやね」
「え」
うれしくなって笑いかけると、照れくさいのか トシくんは一瞬固まり、それから目をそらしてしまった。
「別に」なんて言いながら。
書類の説明がひととおり終わったので、そのまま経理の仕事を始めた。
業者から来た請求書をバサッと取り出し、納品書とチェックしながら検算していく。
トシくんは向かいの席にズベ~ともたれながら、少年ジャンプを読んでいた。
「プ。大人やのに、まだそんなん買ってるん?」
夢中で読んでいる姿がおかしくなってからかってみる。
「貸したれへんぞ」
ムスッとそう言われた。
へへ、休憩時間に勝手に読んでるのバレてた。
「アズ、電卓叩くの、めっちゃ早いな」
ジャンプを読み終えたのか、トシくんがそんなことを言ってきた。
「そう? 事務職、長いからな~」
「好きなん? 経理の仕事」
と聞かれた。
「うん!」
元気にうなずいたから、トシくんは意外そうな顔をした。
「地味やん。アズには接客のほうが合ってると思うけど」
「ん~、接客も好きやけど、経理も好き! ゴチャゴチャッてなってるのを、ひとつずつきちんと整理していく感じが好きやねん」
「へぇ~」