流れ星スペシャル


「それにな、簿記ってすごいよ。うまくできてるなーって感心する!」


簿記というのは、いわば経理の基本ルール。

帳簿を使って取引を管理していく技法。


「そうや、トシくんも簿記の勉強始めたら?」


と勧めてみた。


「え、オレ?」

「うん。かじってて損はないと思うな」


きっといつかトシくんは、店長とか任される人だと思うもん。


「桂木さんは? 普通に身についてるものなん?」


トシくんはそんなことを聞いてきた。


「うん。あの人経済学部卒やから、2級とか持ってる……」

「じゃー、やる」


と、かぶせ気味に宣言された。


プッフ。

負けん気?

て言うよりこれで意外と、桂木さんリスペクトやからな、この子。

そこがちょっと可愛くなる。


「じゃあこんなふうに、ふたりで勉強会しよっか? 週1回、営業前に集合して」

「え、ふたりで?」

「うん」


なぜかトシくんは戸惑ったようにポカンとして、それからヒョコッと頭を下げた。

「よろしく」って。


というわけで、トシくんと毎週1回、簿記の勉強会をすることになったんだ。


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