流れ星スペシャル
お。
トシくんとおぼしきホストくんは、なぜかこっちに向かって歩いてくる。
あ、そっか。通りに出て、お客さんを乗せるタクシーを拾うんだ。
ネオンに浮かびあがるトシくんの姿。
光沢のある黒のスーツ。
颯爽と歩いてくる細身のシルエットは、どう見たってホストそのもので……。
「プ」とうるるんが吹き出した。
「誰あれ?って感じ」
「うん。大人っぽい……よな」
タイはせずに、白いシャツの首元が開いていて、そこにシルバーのチェーンが揺れている。
整髪料で無造作に撫でつけられた髪は、束感が出ていてちょっとワイルド寄り。
だけど、はらりとこぼれた前髪の間から見える顔立ちは、柔らかで繊細で、すごくキレイ……。
「トシくんって、あんな顔してたっけ?」
まちがいなくトシくんなのに、全然別の男性みたい。
「つーかいつもはどんな髪型やった?」とうるるん。
「フフ。洗いっぱ、やろ。サラサラやし、ときどき跳ねてる」
いつものトシくんが妙に懐かしい。
「しかも何あれ? ジャラジャラとアクセサリーつけて、やらしいの」
うるるんがボソッとつぶやいた。
こっちに向かって来るトシくんは、首元のチェーンのほかにも、髪の隙間から見える耳にピアスが光っている。
てゆーか……。
「待って待って。こっちに来る……!」
通りで車を拾うのかと思っていたトシくんが、なぜか道を横切ってこっちに来る。