流れ星スペシャル


「ちょっ、待ってよ」


わたしは自転車を下りて、それを押しながら彼の横につけた。


「一緒にを歩いて帰る」


そう言って並んで歩き出したわたしを、トシくんはチラッと見ただけで、もう何も言わなかった。

だけどすぐに左に曲がったのは、わたしの自宅マンション経由で帰れるルートに修正してくれたんだと思う。


月にも星にも気づかないくらい街路灯が明るく白い光を放っている。

その光に映し出されたトシくんの青白い横顔は、なんだかとても大人びて見えた。


「アズ、軽蔑してるやろ?」


ポツンと、トシくんが言った。


「え?」

「前に、女の子から金巻き上げてるって言われた」

「え、言った……かな?」

「うん。だからこんなホスト丸出しのヤツと一緒に歩くんイヤなんかと思って……」


それであんなに急いで帰って行ったんだ。

いつも勝気なトシくんが、どうして言い返さなかったの……?

なんだか胸がチクチクした。


「イヤっていうか、あんた誰?って感じやもん」


とりあえず笑顔で話を続ける。


「ジーンズに流れ星のTシャツ姿のトシくんしか知らんし。急にそんなオシャレな恰好で登場されたら人見知りするってば」

「なんでやねん。他の恰好もするやろ?」

「上にジャンパー羽織ってるだけな。めんどくさいからって、トシくん家からユニフォーム着て来て、ほんで毎日そのまま帰るやん」

「それはまぁ、そーやけど」


やっといつもの調子が戻ってきた。


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