流れ星スペシャル
翌週、定例となった経理の勉強会の日、わたしはいつもよりも早めに店に来た。
鍵を開け、まだ暗い店内へ入る。
ちなみに、店の鍵はわたしのほかに桂木さんとトシくんが持っていて、誰かが休みの日でも困らない体制になっていた。
窓のスクリーンをあげると、フロアがほんのり明るくなる。
掃除の行き届いた店内。
就任以来桂木さんが心がけてきた清掃の徹底は、今ではすっかりスタッフ全体の仕事として浸透していた。
「まだ早いな」
時計は2時。
開店準備を始めるのが4時で、勉強会は3時からだから、それまでに雑務を片づけたい。
事務室へ行き、パソコンを立ち上げようとしたとき、ヘアのドアがガチャリと開いた。
「あれ? 早くない?」
ヌッと入ってきたトシくんの姿に声をかけてから、息をのむ。
「ど、どうしたん、その顔!?」
どうしたもこうしたも、トシくんの左頬がピンク色に腫れあがっていた。
「なんでもない」
ブスッとそう言い、わたしの横をすり抜けようとするトシくんに思わず声が出る。
「絶対殴られてるやん!」
するとトシくんは足をとめ、チラリとこっちを見た。
「わかる?」
「わかるよっ!」
左頬に手を当て、痛そうに顔をしかめたトシくんがチッと舌打ちをする。