流れ星スペシャル
「借りたけど、返したし」
するとトシくんの答えがだんだんと怪しくなる。
「え? それは確かなん? ちゃんと領収証もらってる?」
「そんなんないけど、給料から引かれて全部返したと思うで」
「お、思う? 給料明細は? とってある?」
頼りない返事に、どうしても詰問調になってしまう。
「ないない。そもそも借用書も書いてへんもん」
なんて、本人はケロッとしているけど。
「えー……。それ大丈夫? いくら借りたん?」
「結構な額やったけどなぁ」
結構な? ん~、華やかな世界やし……。
「い、一本くらい?」
正直ビビりながら人差指を立てると、トシくんは笑って首を横に振った。
「ハハ、そんなには借りてへんよ、半分半分」
そんなにって……。ごっ、50万か。
自分の預金残高を思い浮かべる。
「行こう」
わたしはそう言って立ち上がり、さっきハンガーにかけたばかりのジャケットを手に取った。
「へ? どこへ?」
「いーから、来て!」
キョトンと聞くトシくんを追い立てるように店の外へ連れ出し、鍵を閉める。
「なぁアズ、どこ行くん?」
「いーから!」
ポカンとしているトシくんの手首を掴み、わたしは歩き出した。