流れ星スペシャル
「ふふ、桂木さん、そんな上手が言えるようになったんや」
「え?」
「入社したての頃は無口で、こんなんで営業勤まるんかなぁって心配したもんやけど」
「ああ」
桂木さんはわたしのデスクの横に突っ立ったまま、今度は照れくさそうに笑った。
「あんま勤まってませんよ」
「え、あかんやん」
「ヘマばっかです」
わたしより一つ年上だけど、入社は一年後輩の彼。
実は桂木さんが入社した当初、彼の教育係は一応このわたしだった。
小さな会社なので新人研修なんてものはなく、新人ひとりにつき2年目の先輩がひとりずつ、パートナーとなっていろいろと教えてあげるシステム。
教えると言っても大したことではなく、日常の様々なこと。
電話の出かたや書類の作成、パソコンのネットワークの使い方だとか、ファイルの場所、社内でやっかいな人物は誰だ、とかだ。