流れ星スペシャル
そんないちいちを、ときにはメモを取りながら神妙に聞いている桂木さんを……
たぶんわたしは好きだった。
地味だけれど誠実そうで、彼に何か質問されるたびに、なんだかドギマギと気持ちが華やいだっけ……。
「はい、35,640円ね。金額確認したら、ここにサインして下さい」
「はい」
長身を屈め、出金伝票にサインをする桂木さん。
伝票を押さえるその左手には、まだ新しい指輪が光っていた。
「うどんすきは、リカコ先輩も誘ってあげて下さいね」
ちょっと茶化すように、わたしは言う。
「いやいや、リカコはあー見えて、よう食うから外しましょう」
サインする手を止めることなく、桂木さんは滑らかにそう言った。
「あ、ひどい。言いつけますよ、先輩に」
「えー、それはやめて」
朗らかに笑う桂木さんは、きっと幸せなんだと思う。