流れ星スペシャル
12月に入ると、店はかなり忙しくなった。
忘年会の団体客が多く、そのほとんどが食べ放題のコースを選ぶから、鉄板の上はいつもフル稼働している。
「予約の8名様、あと10分で着くそうです」
来店が遅れている予約客から入った連絡を伝え、調理台の隅に子機を置く。
「おっしゃ、がんばろ」
桂木さんが大きな声で気合を入れた。
ドリンクの注文がひっきりなしに続いて、ホールも少々バタついているけど、以前と比べりゃみんな結構やれてるほうだと、オレは思う。
そうして――
お客さんの注文ラッシュが落ち着き始めた10時半頃、その客は訪れた。
うるるんに案内されて、カウンター席に着いたのは、スッゲーきれいな女の人で……。
肩にかかる栗色の髪を揺らしながら腰を下ろすと、その人は焼き場に向かってにっこりと微笑んだ。
長いまつ毛に縁どられた大きな瞳が、艶っぽく輝く。
「おー……」
料理を取りに来ていたユースケが、感嘆の声を漏らした。
並びで焼く桂木さんも、見とれてフリーズしている。普段なら真っ先に『いらっしゃいませ』って声をあげるくせに。
カッラーン……。
次の瞬間、桂木さんの手から、コテが床に滑り落ちた。
「アハハ、店長わかりやすいな。美人やからって見とれ過ぎですよ」
そう突っ込んだオレの言葉には答えずに、桂木さんはその女性にイラだった声を向けた。
「オレ3時って言わんかったっけ?」
え? 知り合い?